コラム



第6回  実際、どこまで届くの?

 今回は、通話できる距離について解説します。どうぞ、お付き合いください。

 健康診断では聴力の試験があります。かすかな音を聞き逃すまいと真剣に耳を澄ましているところに、かすかな音をピーピーピーと流して、聞こえてきたところで「ハイ」と答えて判定します。通信距離を計る方法も聴力試験と同じで、ピーというかすかな音が聞き取れる限界距離が通信距離となります。これに従うと、Logosease はなんと300mの通信距離になります。では、300m離れて会話が出来るのかというと、まったく出来ません。ギリギリ聞こえる小さな音で話されても聞き取れなくて当然です。
 実際の通信距離が短くなる理由が海況です。静かで透明度の良い理想的な海況であればピー音も300m届きますが、現実的にはそのような海況は稀です。荒れた海ではピー音ですら30mくらいしか届きません。
 このようなことから、レジャーダイビングにおける Logosease の実用的な最大通信範囲は50m~100mとご案内しています。先日の私たちのテストでは、70mほどまでは良好に会話でき、そこを超えると音が小さくなっていき、100mあたりから内容が分かりづらくなってました。海況によって異なるので参考にしかならないのですが、このような聞こえ方をします。

 ここまで読まれた方は、Logosease は50m以上離れていても会話ができるんだ!とお思いになるでしょうが、それは正解でもあり、不正解でもあります。それは、話す方向、聞く方向によって距離が変わるからです。Logosease の円形のピカピカ光る金属部は超音波を出すアンテナで、人間でいえば口と耳に相当します。アンテナから音が発せられ、アンテナで音を拾います。
 人間の場合は、口も耳も前方を向いていますから、向かい合って話をすると一番明瞭に会話が出来ます。お互いが背を向けて話すと良く聞こえません。Logosease もまったく同じで、向かい合って話をするときが一番明瞭で、背中合わせでは聞きにくくなります。

Column6th
 図を見てください。中心に話し手のダイバーがいます。そのダイバーを常に見ながら、良く聞こえるところを示したのが青のエリアです。前方はものすごく遠くまで話せますが、後ろは約20%に落ちます。また、左側はシャドーゾーンです。ここは、Logosease の取り付け位置の反対側で、身体の陰になって音が届きにくいのです。ある程度離れると音が回り込んで届くのですが、近いと聞こえないエリアです。

 指向性がある Logosease ですので、相手を見て話すこと、相手を見て聞くこと、これが明瞭に会話するコツです。聞きにくいときは、話し手か聞き手のどちらかは相手を見てください。これで、会話の明瞭度がグッと上がります。さらに、この性質を利用すると、話し手のダイバーを探すヒントを得ることが出来ます。声が聞こえてきたら、その場でぐるりと回ってみると、音の大小が変わります。一番はっきり大きく聞こえた方向に、話し手のダイバーがいる場合が多いのです。薄ぼんやりとした人影の特定などに有効です。ですが、岩などの遮蔽物があると変わってきますので、ご注意を。
 どこにいるかわからない人に呼びかける場合は、いると思われる方向を向いて3回呼びかけて、応答を待ってみてください。何も返答が無い時は、90度向きを変えて同じことを繰り返します。4方向について実施すれば、どこかの方向で相手に聞こえるはずです。ただし、岩などの遮蔽物があると聞こえない場合もありますので、気をつけてください。

 今回の話をまとめます。

  1. Logosease のレジャーダイビングでの実用的な最大通信距離は50m~100m
  2. 指向性があり、前方が強く、後方はその約20%。
  3. 左側にシャドーゾーンがあり、音が伝わりにくい。
  4. 会話するときは、少なくとも話し手か聞き手のどちらかは相手の方向を見る。
  5. 指向性を利用すると、話し手のいる方向のヒントが得られる。
  6. どこにいるか分からない人への呼びかけは4方向に行う。

 今まで、Logosease の通信距離は「有視界の範囲」とお伝えしていました。それは、話す方向・聞く方向で通信距離が大きく異なるため、わかりやすいよう「有視界」という言葉で表記していました。しかしながら、作業ダイバーの方々から多くのご質問をいただいており、通信距離と指向性をより正しくお伝えするため、仕様の表記を変更しております。


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