コラム



第7回  超音波との戦い ~ 海の中の超音波

 水の中は電波がほとんど届きません。そのため、ロゴシーズは、32KHz 付近の超音波を使って通信しています。 可聴域は ~20KHz 程度ですので、それより高い周波数の音は人間の耳には聞こえません。しかし、32KHz 付近 の超音波が水の中にあれば、その音をロゴシーズが拾ってしまい、ノイズとしてスピーカーから出してしまうこ とでしょう。顕著な例では魚群探知機のソ ナー音です。1秒間隔で出るトントントンという超音波はかなり大き な音です。これは、以前にコラムでご紹介した通りです。 (コラム第5回参照)つまり、ロゴシーズは水中の超音波の検知装置でもあるのです。

 驚いたことに、ダイバーの周りには私たちが想定する以上の超音波に満ち溢れていました。それらの超音波を ロゴシーズが検知しノイズとなって聞こえてしまうのです。今回は、この超音波ノイズとの戦いの話しを書きた いと思います。超音波の発生源のほとんどはレギュレータです。空気を吸う通り道から様々な音が出てきます。 タンクから空気が吹き込まれマウスピースから空気が出て行く 構造ですので、笛やラッパなどの楽器のように 空気が流れて音が出るのでした。メーカーによって、機種によって、そして、レギュレータの経年劣化によって、 本当に様々な音が発生しています。

 最初の超音波との戦いは吸気音でした。
 呼吸時にザーというノイズがうるさくて不快というご意見が発売後に寄せられました。私たちは、お客様にレ ギュレータの製品名をお聞きし、それらを実際に 購入して、どのような音が出ているかを水中マイク(ハイドロ フォン)で調査しました。すると、図1のように吸気時には 30KHz~50Khz全体に超音波が出ているのでした。 ホワイトノイズと言われるものです。
 日本メーカーのレギュレータは、小型のものが多く吸気しても超音波はほとんど出ません。しかし、海外メー カーのレギュレータは大型のものが多く、機種に よっては吸気時にスーハーという大きな超音波を発するものが ありました。強く息を吸うと超音波も強くなります。ですので、疲れてきて息が上がってくると、 呼吸が荒くな り、結果的に超音波の音も大きくなります。
 この吸気時の超音波を消さないと静かなダイビングを楽しむことは出来ません。私たちは、次の2つを目標に デジタルノイズキャンセラーを作り出しました。
 1.吸気時の超音波はスピーカーから音を流さず、静かなダイビングを実現する。
 2.受信音声に吸気音がかぶったときには、吸気音のみをカットして受信音声を聞きやすくする。
 そして、世界3大メーカーのレギュレータ数機種で評価して 2013年6月7日 にソフトウエアをリリースしました。

 次の戦いは、笛のようなピーという大きな超音波の音が相手でした。
 お客様に教えていただいたレギュレータを購入して、水中マイク(ハイドロフォン)で音を取ると、本当に楽器 のような大きな音を出していました。図2のよ うに 35 KHz 付近と70KHz付近に極めて強い音が出ています。 エアーの通り道にある特殊な構造が、楽器のような音を出しているのです。この特殊な構造がこのレギュ レータの 大きな特徴にもなっていますが、それが大きな超音波の発生源にもなっているのでした。音のパターンは固定では なく、吸気の強さや長さで変化してい ます。まさしく楽器と同じです。
 これらは音声とは全く異なるパターンですので、非音声の周波数変化を認知してその周波数を消すように対策を して、ソフトウエアをリリースしています。

 このほか、BCの吸排気や、ドライスーツの吸排気、そして、ダイブコンピュータのアラーム音など、いろいろと 超音波を発するものがありました。これから も未調査のレギュレータが大きな超音波を発するケースがあるかもしれ ません。何か不快な音が聞こえるときは、ぜひ私どもに情報を教えていただきたいのでした。

 超音波は人間の耳には聞こえません。そのため、レギュレータから超音波が出ていても設計者もお客様も異常とは 思わないことでしょう。聞こえない、つま り、うるさくないのですから、問題になりません。ロゴシーズのような 超音波検知装置だけが分かります。もっとも、イルカなど海棲哺乳類にははっきり聞こえ ていることでしょう。彼ら はどう感じているのでしょうか。呼吸のたびにピーヒャラ聞こえるなぁと興味津々なのか、うるさいとおもっているの か、それとも全 く気にしないのか。一度、聞いてみたいですね。

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